江戸時代中期から幕末にかけて、北辰一刀流、神道無念流、天然理心流など剣術が隆盛した時期がありました。剣士たちは道場に通って稽古を重ね、その中で特に「ワザ」を極めた剣士が、師匠から「免許皆伝」を授けられました。坂本龍馬は北辰一刀流、桂小五郎は神道無念流の免許、土方歳三は免許の一歩手前の天然理心流目録でした。
アトピー「免許皆伝」とは、歴史好きで、居合道を習っていた院長が作った言葉で、アトピー性皮膚炎をよくする「ワザ」を患者さんに伝えていきたいという想いを表しています。
アトピー性皮膚炎をよくするには、患者さん(ケアする親御さん)自身が正しい軟こうの使い方を理解して、皮膚炎がよくなるように自宅で外用治療を続けることが重要です。軟こうの正しい使い方を説明し、軟こうの具体的なぬりかたをお示しして、自宅での療養を援助することが、まつもとクリニックの大切なミッションと考えています。
「ステロイドが怖い」と思っていると、「しっかりぬる」ことができません。このページでは、「ステロイドは怖くないですよ」という解説をしていきたいと思います。
皆さんは「ステロイド」と聞くと、どんな薬と思いますか?
何となく「副作用がきつい」「危ない」というイメージがあるかもしれませんが、実際の医療の現場では、ステロイドで病気が良くなった患者さんは、たくさんおられます。
ステロイドは、開発された当初は強力な抗炎症作用で関節リウマチの特効薬として使用され、発見者、抽出者のヘンチ、ケンダル、ライヒシュタインが1950年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。
ステロイド薬には、注射、飲み薬、吸入、目薬、点鼻薬、軟こうと色々な種類があります。
飲み薬のステロイドは、開発当初は関節リウマチの特効薬でした。とても効果がある一方で、胃潰瘍、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症などの副作用もみられ、他の新薬の開発も進んだため、一時は使われなくなりました。その後、胃潰瘍、骨粗鬆症などの副作用がコントロール出来るようになり、活動性の高い関節リウマチの初期治療に使用されたり、また痛みの軽減のために少量が投与されるようになりました。リウマチ以外の膠原病、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、突発性難聴、血液疾患では、今でも治療薬として使われています。
ステロイド軟こうの副作用にはどんなものがあるのでしょうか。
まず、飲み薬のステロイドのように、胃潰瘍、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症などの内蔵、全身の副作用、免疫抑制は、正しく使用すれば起こらないので心配しないでください。
実際には、ステロイド軟こうの副作用は、ぬっている皮膚に現れます。長い間ステロイドを毎日休まずにぬり続けると、ぬり続けている部位に副作用が現れます。これを「ステロイド皮膚症」といいます。
ステロイド皮膚症
「皮膚の副作用」は、ステロイドをぬるのをこわがって、ちょっとずつぬって、やめるとかゆくなるのでやめられない、結局毎日ステロイドをぬり続けている時にこそ現れやすいのです。
また「皮膚の副作用」はあまり知られていないので、気づかない間に進んでいることがあり、注意が必要です。間違ったWEB情報では「ステロイド軟こうの害」を強調し「なるべくぬらないほうがいい」と発信することが多く、その情報を信じて薄ぬりを続けて、かえってそのために「ステロイド皮膚症」になってしまった患者さんを、これまで何人も診察しました。
ステロイド軟こうは、怖がって少しずつ毎日ぬると、
皮膚の副作用を起こしやすくなる
しっかり短期間にかゆみが改善するように使って、よくなったら一旦休む
「しっかり短期間にかゆみが改善するように使って、よくなったら一旦休む」ためには、一体どれくらいぬったらよいのか。その目安となる量が FTU(Finger Tip Unit)です。FTU療法
正しくFTU療法でステロイド軟こうをぬると、3~4日でかゆみが改善し、1週間後にはステロイドを一旦休めるほど炎症が改善します。
FTU療法を始める時の一番のハードルは「ステロイドは効かない」「ステロイドは怖い」と思っている気持ちなのです。
まつもとクリニックでは、患者さんがステロイド軟こうの効き目と副作用を理解して、怖がらずに使ってもらえるように、アトピー性皮膚炎初回の診察では、時間を取って説明をするようにしています。
また「しっかりぬってください」という言葉は、これまで通院していた皮膚科や薬局で何度も聞いていて「耳タコ」かもしれませんが、言葉だけではどのくらいが「しっかり」なのかわかりません。
まつもとクリニックでは、診察の後、別室で時間を取り、看護師による軟こうぬり方指導、患部にステロイド軟こうを外用する処置を行い、FTU療法の実際を体験し理解してもらうようにしています。
知る
ステロイド軟こうのFTU療法、
ステロイド軟こうの効果と副作用について説明します。
体験する
診察の後、看護師が実際に皮膚炎を起こしている皮膚に、
ステロイド軟こうをぬります。
実行する
自宅に帰ってから、FTU療法を実行します。
アトピー性皮膚炎の治療は一回ぬったらおしまい、ではなく、毎日の継続治療が必要です。
ステロイド軟こうで良くなったら、他の軟こう(プロトピック、コレクチム、モイゼルト、保湿剤)に切り替えていきます。
ぬり方だけでなく、ぬり分け、ぬり替えもあり複雑なのです。
まつもとクリニックでは、2回目の診察でステロイドからの切り替え、3回目でぬり分けについて説明を行っています。初回の診察から1週間目に2回目の診察、2週間目に3回目の診察に来られることをおすすめします。そうすることで、だんだん「ステロイド軟こうの上手なぬり方」をマスターできるようになります。
ぜひ、当院まつもとクリニックで、アトピー性皮膚炎がよくなる「ワザ」を身につけてください!